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VRCSダンス部発表会の書き残し

· 約58分
Be Interes"thing"!

集合写真

先日、VRCSダンス部発表会がありました。ダンサーとしても出たのですが、それ以上にワールド制作者としての側面も多くありました。

あまり語られることもないだろうと思いますので、色々な努力についてここに書き残しておきます。

前日譚

最近のダンス発表会系のイベントってすごいですよね。演出も含めて、総合的に来場者の方を楽しませるイベントとして成長しているという肌感があります。 ダンス発表会の企画自体は5月か、6月くらいに動き始めました。それくらいから、特に目についたダンス発表会系のイベントやVRCアイドル文脈のステージイベントには、行けるところに片っ端から通い詰めました。いくつか写真を貼っておきますね。

からぱりふぇす からぱりふぇす づの、正直すき

ミルクリ 1st Aniv ミルクリ1st Anniversaryのダンスパート。

めりりーぱふぇ サンリオのアイドルフェス。特に久世ぬぬちゃん(真ん中)と縁があって、めりぱふぇは特に推してます。

あきたん会 あきたん会。祝われる側がソロで1時間踊ってる激ヤバイベント。

坂本組のイベント 坂本組で行われていたイベント。ノンジャンルで色々な演目が観られました。

キタバース キタバース。誕生日会系のイベントに限らず、あらゆるダンス発表会系のイベントの中でも最高打点を叩き出してくる最強イベント。

すたぷれ2nd βorealis すたぷれ2ndLive "βorealis"。気合の入り方が異次元。

他にもいろいろ行きましたが、様々なイベントと魅せ方というのをインプットしてきました。 元々の来歴はパーティクルライバーなのですが、直近はステージ演出にも興味があって(もちろんダンス発表会系のイベントも、VRCアイドル文脈のイベントも好き好き大好き)、純粋に楽しむと同時に多くの学びを得られました。

そうそう、ステージ演出周りのライティングの技法について、色々Istriaさんに教えていただきました。こういう方です。今回の為というわけではなくて、過去1年間くらいに渡ってちょくちょく色々な技法について教えていただいたり、実際にUnityの画面を見せていただいていたこともありました。ある種、「それに見合うものを作らねばならない」というプレッシャーがあるという……

ステージ演出といえば、最初に作ったのは去年のほしまいに出演した際に制作した、『天樂』の演出が最初でした。

天樂 天樂。かっこいいよね。

その後に一度、天樂で一緒に剣扇舞をした相手である雪代琴狐さんと、VR剣舞師のLag:N/Aさんへ『吉原ラメント』の演出を提供させていただきました。このへんこのへんを見ていただくと雰囲気が掴めるのではないでしょうか。

で、少なくとも半年、自分が出演するイベントとしては約1年の間、演出を作っていませんでした。というか、パーティクルライブも作っていなかったので、制作というもの自体を全然やっていませんでした。自分の中で、「自分だけ制作してね~~~~~!!!!!」という焦りというか後れを取っている感覚は若干ありました。

その中で迎えたVRCSダンス部発表会イベント。ワールド制作周りを全部受け持ったタイミングで、自分の中での目標が決まりました。

  • 1年分の知見の実験をする
  • ダンス部発表会で、他のダンス発表会系のイベントと遜色ないクオリティを出す

一つ目はもうそのまま、このイベントを実験台にしてしまおうということです。流石に制作をしなさすぎて、実験の時間も満足に確保できていませんでした。本番が実験環境って、すごい贅沢な本番の使い方ですね……。自分で言うのもなんですが。

直接は関係ありませんが、裏では私が演出に携わっている別のプロジェクトがあります。それに対して十分なクオリティを出すための実験、という側面もあります。今年中には何かあると思うので、気になる方は気にしていただけると嬉しいです(実質、何も言っていない)。

もう一つが、文化祭に向けての布石です。文化祭が秋終わり頃にあることはなんとなく耳に挟んでいたので、むしろ自分の中ではそちらを真の本番と位置付けています。VRCスクールのイベントということで、少なくともVRCスクール関係者の来場はある程度安定して見込めることが(過去の文化祭の事例も含めて)想定できました。まずは"身内"に向けてよさげなものを出して、1ステップ踏んだうえで文化祭を迎えることで、口コミによる情報の伝搬を狙っていました。実際のところこれには嬉しい誤算があり、想定外の方向に転がることになるのですが……。

ワールドギミック

ワールド全部担当しているので、ワールドギミックも色々作りました。演出より先にこっちを紹介します。

GeneralSwitch

GeneralSwitchたち GeneralSwitch Inspector いわゆる「オブジェクトのON/OFFを行う」ボタンです。去年の7月くらいに、天使のひまわり!2ndLive『Angelic Sunflowers!』の際に制作しました。

それ自体は一般的なものですが、特筆すべき点は「ON/OFF対象のオブジェクトの数が可変」「スイッチの数も可変」「Local/Globalも可変」という、汎用性を極限まで煮詰めた構成にあります。これ自体のバグを可能かなぎり厳密に取り除いてあるので、何かしら不具合が起きた時にここのソースコード周りは一旦思考から除外して考えてよいものとしています。

スイッチの数自体は、このスイッチを触った時にCubeの色が赤と緑に変化する判定に使っているだけで、Interact判定に関してはUdonが付いているGameObjectに対してColliderを複数設定することで増やしています。スイッチの色は、Toggle Objectsの先頭のGameObjectのアクティブ状態を参照しています。

ワールドに存在する全ての単純なON/OFFギミックはこのボタンのPrefabから生成されています。更に改善できる点があるとするなら、ボタンの上のテキストは手動で設定しているので、ここの自動化も頑張れば多分可能です。頑張れば。

折角なので、使われている内容全部書いておきます。

  • Global
    • Buzzer - 開演ブザーです。AudioSource入りのGameObjectのON/OFFで制御。使いまわしは正義なので、
    • StageInfo - 「開演前の注意事項」です。パネル画像自体はSpriteから生成しています。
    • StagePoster - ステージ上にポスターを出す、主に集合写真用のギミックです。
    • StageIntrusionCollider - 観客席とステージを分けるコライダーのスイッチです。本番は常時ONですが、リハの時とかはだいたい切っていました。
    • CanEnter - 21:50まで入場できなくするギミックです。21:50に手動で入場可能にすることで、これを実現できました。
  • Local
    • IwaSyncMover - Moverと付いていますがこれは昔の名残で、今の実態はSwitcherです。動画再生を担うQuadを狙ってON/OFFしています。
    • Effect - 演者がダンス中に重くならないように、演出を切るボタンです。私は1曲を除いて付けたまま踊っていましたが……。
    • CalibrationMirror - 演者向けのキャリブレーションミラーです。演出が出ていない時にワールドが真っ暗になるので、ミラーに合わせてDirectionalLightも点くようにしています。
    • StaffRoomCollider - スタッフルームから落下しないようにするためのコライダーのスイッチです。飛び降りると奈落。
    • Mirror & Bamiri - ステージ上のミラーと、位置確認用のバミリを出すスイッチです。ステージミラーはVRCPlayersOnlyMirrorを使用しています。

DancerMode

信義則のため詳細は書けませんが、ダンスを"いい感じ"にしてくれます。

IwaSync Player

普通のIwaSyncです。ただし、Sync FrequencyとSync Thresholdはそれぞれ2, 0.2まで下げています。特にThresholdはどこまで下げていいのか正直わかりませんが、デフォルトと比較すると非常に小さい値であることが分かります。

また、Playlistに今回使用する曲を全て入れています。これで選択も楽ちん。ちなみに、BGMや暗転用の無音動画も入っています。

更新で壊れるのが嫌なので、ここのコードには一切手を入れていません。このために、後述するコードがたいへんな筋肉実装となってしまうのですが……。

IwaSyncEffeceWrapper / PlayableAdjusterWithIwaSync

今回の目玉ギミック。これら2つが協同で、動画の音声に対してエフェクトが†完全に†同期します。

IwaSyncEffectWrapper IwaSyncEffectWrapperでは、動画に合わせて曲の演出をスイッチします。曲の判定にはURLを使っており、URLがIwaSyncのPlaylistから取れればよかったのですが調べる時間がなかったので、Public変数としてURLのString配列を持つことにしました。何故かVRCUrl型ではうまく判定できませんでした。

PlaylistURLと演出の突き合わせは、「N番目のURLがIwaSyncに入っているなら、N番目の演出をONにする」だけで、Index番号を用いる素直(?)な実装です。問題は、「IwaSyncにURLが入った」ことを取得することです。IwaSyncの本体のコードがいじれない制約上、私の知識には「URLが入力された」イベントを外部Udonから取る方法がありませんでした。そこで、Updateで毎フレーム、現在のURLを取得し続けるという筋肉実装が行われています。

「外部のUdonでイベントが発火した」という情報を取得する方法が思い当たる方は、ぜひご連絡をお願いいたします。マジで。

PlayableAdjuster PlayableAdjuster with IwaSyncでは、IwaSyncの動画の再生位置に、Timelineの再生位置を同期させます。

……突然Timelineの話が出てきました。そう、本イベントの演出周りは全てUnityのTimeline機能を使って製作されています。多くのパーティクルライバーが用いる方法と同様です。普段のパーティクルライブと異なる点は、Timeline(Playable Director Component)を付けたままアップロードできることです。あと、それに伴ってUdonで制御できること。

PlayableDirector1つにつきPlayableAdjusterが1つ付いているのですが、これもUpdateで毎フレーム、現在の動画の再生位置とTimelineの再生位置を合わせ続けるという筋肉実装です。一応、ズレがeps(デフォルトだと0.05秒)未満であれば処理をスキップすることで過負荷になりすぎないようには心がけている……つもりです。IwaSyncみたいに、Sync Frequencyを設定できるようにするのがスマートな実装だと思います。

実装に際して、rzVRMVTimelinePlayerを参考にさせて頂きました。主にPlayableDirectorの扱い周りです。参考にしたといっても、だいたいリファレンスに書いてある内容で完結していたので、リファレンスが読める人はそれでいいと思います。

これら2つについては、もうちょっと形を整えたものをどこかで公開できたらいいな~と思っています。特に、「IwaSyncのPlaylistから動画URLを取得する」「Sync Frequencyを導入する」「Udon自体を1つにまとめる」の3点を今後実装したいと考えています。

そういえば、他の人もTimeline(もしくはAnimationWindow)から演出作ってるんですかね?少なくとも1名は「Timelineから演出作るのだるいから、全部Udonで制御できるようにした」って言っている人を見かけたので。いや流石にTimelineの方が良くない????? いやTimelineも決して最優秀な選択肢ではないんですが……。

ワールドライティング

ワールド全部担当しているので、ライティング周りも全部面倒見ました。全部といっても、そんなに高級なことはしていません。

エントランス

エントランスホール エントランスとステージに共通で、Drama Hallというアセットのモデルを改造して使用しています。特にスケール周りやステージ側の観客席の構造などを作り変えています。

とにかくちゃんと軽いこと、そこそこ見栄えがいいことの2点を心がけています。というのを先述した『Angelic Sunflowers!』と昨年のVRCSダンス部発表会でやったので、使いまわしです。楽できるところで楽をしましょう。

一応、リスポーン地点正面の扉の先ではなく、その逆側にステージが存在します。ワールドにOcculusion Cullingを意図的に入れていないので、最低限Frustum Cullingは利くようにしようという、言うなればお祈りみたいなもんです。

エントランスでアバターが暗くなること、演出発生時にエントランスが爆裂に光ることは既知の不具合です。文化祭までにはなんとかしたいなぁ……。なんでOnPlayerTriggerEnterってうまく動かないんですか!?

ステージ

ステージ ステージも同様に使い回しです。ただ、メッシュの統合だけ統合単位を変えています。実はざっくり「観客席側」と「ステージ側」だけで分けてよくて、演出では「ステージ側」を消すことで自由な舞台を生成できます。

Frustum Cullingお祈りは、エントランスを出口側に置くことで対応しています。Camera Farで消してもいいのですが、演出との兼ね合いの都合上できませんでした。

全体としては照明が映えるように黒主体で、幕は映えるので赤いです。黒は黒でも、やや灰色寄りの黒だと照明が入った時に分かりやすいのでこの色を採用しています。また、段差近くの白い板と、段差の部分のAudioLinkが、演出によってよく光ります。モノ好きな人はここの光り方からPostProcessを逆算してみてください。

あと、Enviroment Lightingでの光源効果を一切排除しています。これも演出都合。これはこれで演出を制御するのが難しいんですけどね。環境光ってUdonから触れたっけ…… 環境光自体は触れた気がするけどSkybox変更がうまくいかなかった記憶がある……

音響

出演者でもある煉獄丸さんにお褒めいただいたので、折角なので書き残しておきましょう。

先の章のステージのUnity画面のスクショを見てもらうと分かると思いますが、ステージ上にAudio Sourceが4つ存在します。実際にはこのうちの2つはTopazChatによるものなので今回使ったのは2つですが、Audio Sourceを増やすことで音響の立体感・臨場感を演出しています。あと、現実のステージでは舞台の左右などにデカいスピーカーがあったりするので、それの再現という気持ちも含まれています。天ひま2ndの時に、プロデューサーのひまみんとさんにアイデアを出してもらってこの調整に落ち着きました。

音響設定 反響設定については、難しいことはしていません。Audio Reverb Zoneを適切な距離に設定する気持ち。客席の後方に行くと反響感が減少します。様々な物体が音を吸収するイメージ。先述の天ひま2ndの使いまわしですが、何も考えずに使いまわせるくらいには良い「ホールの響き」をしてくれます。恐らく今後も使われることでしょう。

更に詰めることもできると思いますが、それをするなら実際のホールで大きな音を鳴らした際に、位置によって反響感がどのように変化するかを知る必要がある気がします。人生経験が足りていないですね……。

アバターライティング

研究中のタイミングのやつ リファレンスはキタバース(2023)、それと不特定多数のおはツイです。おはツイ勢、見た目に狂気じみたこだわりがありがちなので、方向性構わず大量のインプットが欲しい時は重宝しますね。

あと直接的なリファレンスではないけど脳裏によく走っていたのはSS!ダンスリサイタルやSanrio VFes ハルリットスペシャルステージなどです。なんか、明らかに、誰かさんに直接影響を受けている……。まぁ誰かさんもスクール1期生ということで、実質協力戦ということで、許してくれや……。

liltoonのプリセット機能を用いて導入を行い、出演者のみんなに協力してもらう形で実装をしました。ステージ上での見栄えを前提としているため、通常のワールドではかなり影が色濃く出るようになっています。逆光時のリムライトがほんのりアバターのアウトラインのように出てくるの、お気に入りです。

行間 - 本番前のおはなし

ワールドの最終版がアップロード完了したの、なんと本番インスタンス集合の80分前です。

最後の最後まで後述する演出の調整と、演出の調整と、バグ取りと、演出の調整を行っていました。スケジュールが頭悪すぎる……。遅刻していないのでギリ許されるということにしてください。一週間くらい某UnitedでMagicなイベントの運営を放り投げて作業していたので……。それでギリギリなので……。(どっちかというと放り投げてた方でお叱りを受けそう)

他の人がどう思っていたかはわかりませんが、私の中ではインスタンスMax80人中、だいたい40~50人程度の混雑率で推移すると予想していました。これは、前回の文化祭の際のインスタンス人数が30~40人程度で推移していて、そこに直近の期の卒業生バフと文化祭ではないデバフを考慮してこんなもんという予想でした。

蓋を開けたら、インスタンスに80人いました。え?????軽く参加者分析をしたところ、スクール生が35名程度、ダンサー勢が25名程度、純粋にこの手のイベントを観に来るのが好きな人とかが10名程度、って感じでした。軽くなのでブレがあるかもしれませんが、ダンサー勢の方に結構話題が飛んでいたのかな?というのが興味深いポイントですね。

演出

がんばりました。

先述した通り、私にとっては過去1年分の知見の実験場です。それに加えて、パーティクルライバーとしての、ステージイベントが大好きなオタクとしての、視聴覚演出の探究者としての、矜持(?)がかかっていますから、そうふざけたものは出せません。まぁある意味ほとんど"期待の外"からのスタートなので、逆に楽だったという話もあります。

前提としてアバターライティングを統一できたので、自分の手元で演出側のライティングを調整できます。今回はPostProcess(ポスプロ)に大いにお世話になりました。特に、Bloom, Auto Exposure, Color Gradingの3点セットを使いまわしていました(使っていないやつもある)。

  • Bloom : 眩しいところを"ぼわっと"させるやつ。パーティクルやビームライトシェーダーと相性が良い。
  • Auto Exposure : 全体的に明るくしたり暗くしたりできる。微妙によく分からなくて、ふんわりとした理解で使ってる。
  • Color Grading : 色調補正ができる。たぶん3割くらいの機能しか使ってない。

全体の製作の流れは、まずビームライトや背景を設定してメインの照明を調整したうえでポスプロ設定。その後でTimelineで音に合わせた演出作成を行い、演出全体が概ね完成したタイミングでポスプロの微調整を再度入れています。

……が、基本的な流れです。時間の都合がかなり厳しく、基本的な流れから逸脱した作り方をした演出ももちろんあります。ここからは、各楽曲について演出を、そして様々な噓ライティングについてを少し深掘りしてお話します。

混沌ブギ

混沌ブギ 発表会1曲目ということで、イベント全体の方向性を決定づけるといっても過言ではありません。というわけで、ビームライト(とDirectionalLightの調整)のみの、かなり基本にして王道の組み方をしました。

混沌ブギ 一つ特徴として、背景の形状は変更せず、幕の色だけ白にしています。こうすることで、幕がライトの影響を素直に受けてくれます。その上で、アバターには後ろななめ45°くらいから逆光を当てています(逆光を前提にポスプロを組んでいるので、暗くなりすぎないようになっています)。

逆光だとステージ側に光がうまく当たらないので、DirectionalLightはアバターのみに当てて、ステージ側はPointLightで照らしています。ちょうど青い方の写真が分かりやすいかもしれません。これが今回一発目の噓ライティング、噓大域照明です。

混沌ブギ 混沌ブギ 混沌ブギは1曲目からとんでもない嘘をやっています。後半のサビ("混沌地帯"って勝手に呼んでる)では、なんとアバターに当たる光の色とワールドに当たる光の色が逆になっています。

今回の振り付け元動画がこれなんですが、この混沌感を演出したくなったので、びっくりするくらい大嘘をつくことにしました。ある種、「この後も色々と嘘をつきますよ」という予告なのかもしれない。

ポスプロは、ビームライトがかなり白くなるように調整しています。逆光は眩しい方が楽しいので。もうちょっと真面目に書くと、眩しい分が白く、その外側に色が出るようになります。ちょうど画像1枚目が分かりやすいです。対してアバターは逆光状態なので、背景との対比でしっかり色が出るようになっています。まぁ光の当たる方向は全然嘘なんですけど。

かなり時間がない中で悪くないラインまでは出せましたが、この曲ではまだまだ色々やりたいことが残った状態で終わってしまいました。以下はその一例。

  • 「完全体の山田」「三千体の田中」を活かす
  • 草生えるところで背景を"切り取る"
  • 「混沌」視界ジャック (もしくはそれまがいの何か)
  • 全体的に、もっとビームライトを動かしたり、よりダイナミックな演出

この辺は文化祭での課題ということで……。文化祭でこの曲があればの話ですが。

愛包ダンスホール

愛包ダンスホール 演出後回しにしたら間に合わなくなっちゃったシリーズ。ダンサーの地力が高いことを信じてダンスで殴ってもらいます。

ステージ全体としては、本家振り付け元をいい感じに融合するイメージで作りました。床とロゴが本家から、背景の細かい点光源とトラス構造が振り付け元からの借用です。ちなみち、背景はBlenderでフルスクラッチとなっています。

愛包ダンスホール 愛包ダンスホールといえば、やはり目を引くのが背景のロゴ。本家をそこそこ高い精度で再現できていると思います。寄せすぎると怒られる気もするので、「愛」の2~4画目とかを分かりやすく崩しています。シェーディングは全てliltoonを採用。ラメ機能でキラキラさせています。

愛包ダンスホール これもBlenderで作りました。あらゆる形状は、作ればあるのです。「ダンスホール」部は使われているフォントが無料だったのでテキストから簡単に作れたのですが、「愛包」部は使われているフォントがサブスク有料しか見つかりませんでした。買い切りなら買うのに……。

愛包ダンスホール というわけで、円の押し出しと平面で形状を作ってブーリアンで繋げるという激きしょ気合ゴリラBlenderで作りました。最終的に求めている形状が完成するなら何をしてもいいのです(もちろん、後で無駄な頂点は消して面を張り直しています)。

……ここまでの工程に時間をかけすぎて(4時間くらい)、Unity側にかけられる時間が1時間とかしかありませんでした。カス!w

この曲はAuto Exposure不使用です。そこまで考慮して組む時間がなかったので……。全体光源は白で統一して、ポスプロからやや紫寄りに色を整えています。ビームライトと背景の細かい点光源が紫なので、そこをいい感じに光らせるつもりで。光り物はパーティクルライバーの得意とするところです。

アニメーションはマジで時間かけていません。20分くらいで組みました。なので、"疎"です。時間あったらもっと色々するんですけどね……。「パイ?」とかやりたい。

でもまぁ、ダンサーがめっちゃ上手ければ演出って時間かけなくてもなんかいい感じになります。ライティングだけしっかりしてればもう完璧にしてくれるので。

キャットラビング

キャットラビング 大問題演出(大歓喜)。

  • ぐりんと「演出、待ってま~す」
  • みなとーん「ここで力尽きました」(本番19時間前)(Fatal Errorの画面)
  • ぐりんと「あとは引き取るね」(本番12時間前)

-3時間後-

  • ぐりんと「できたわ。ライティングだけ完璧に組んどいたから、完璧に踊ってください」

テーマは「影絵」です。暗黒の中にシルエットが綺麗に浮かび上がるようにしました。

キャットラビング この曲では、SpotLightを多用しています。というか、みなとーんから送られた作りかけの演出で、SpotLightが多用されていたためです。DirectionalLightに置き直す時間がなかったんだ……。

逆に、この曲以外の演出では、アバターに当たる光はDirectionalLightで統一しています(SpotLightが当たっていそうな場所は、ワールドにSpotLightとアバターにDirectionalLightを分けて当てています)。SpotLightだと、立ち位置によって光の当たり方が大きく変わってしまったり、見えなくなってしまったりしてしまうため、アバターライティングが安定しません。今回はSpotLightを使うことになったため、みなとーんに立ち位置を厳密に決めてもらうことで対処しました。

キャットラ�ビング ポスプロに対しての理解が深まったシーンです。BloomとAuto Exposureを強めすぎると強く白飛びしてしまいます。しかし、弱めてしまうとBloomの"光をぼかす"効果が減衰してしまいます。そこで、Color GradingのPost-Exposureを負の値にすることで、"光をぼかす"効果を最大限強めつつ、特にアバターの白飛びを防いでいます。

ついでに嘘ライティングです。背景の明るさで本来は空間の反射光が発生して、前からの見た目が少し明るくなるはずですが、完全に明るさ0にしています。これは、シルエットを際立たせるためです。これこそが「影絵」です。

ちなみに、このビームはみなとーんから送られてきた演出の中に入っていたパーティクルビームを改造したものです。

キャットラビング ここも影絵です。正面からワールドだけにSpotLightを当てることによって、アバターだけが黒く浮かび上がります。これも「影絵」です。本番では、待機場所にいる人の影も映ってしまったのが反省点。

全体的に非常に暗い中でのライティングを行い、舞台が持つ奥行き失わせることで空間感を失わせる方向で調整しました。終盤でこの「影絵」をすることで、奥行きという情報を与えることで印象的に映るようにしました。

Timelineを見た時は割と絶望の進捗でしたが、送られてきたパーティクルの中身にかなり使えるものが多くて、それらの組み合わせでかなりなんとかなった感覚です。あとはポスプロパワー。ポスプロ殴りは全てを解決する。

パメラ

パメラ 私です。自分だけなので、何をやっても許されます。リファレンスはSS!ダンスリサイタルの、くりむさんのパメラです。あれに衝撃を受けて、あの衝撃をもう一度作りたくて、この曲を選びました。

この曲だけは、ポスプロ3点セット以外を使っています。画面に対してノイズのような効果を与える、Grainです。Grain含めた全体のライティングは切なさ、繊細さ、少しばかりの古さを意識しました。自分のダンス力を信じて、派手な演出はほとんどしていません。

背景のステージモデルはBlenderで作りました。ただし花瓶だけは「作れるけど、時間的に微妙だな~……」となったので購入しました。あと、CC0 Texture万歳!

パメラ 嘘逆光です。大好き。実はアバターが照らされないタイプの逆光はキセレゾという先行事例があります。良いと思った表現はガンガン真似していきたいですね。ダンス的にはこの瞬間に全力ジャンプで綺麗にシルエットが映るように動いていました。なのでここの振り付けも実はミニアレンジ。

自分のダンス力を信じて演出軽め。これはキタバース(2024)のシャルルのリスペクトでもあります。そもそも、良い舞台で気持ちよく踊れたら楽しいんですよね。

すーぱー☆あふぇくしょん

すーぱー☆あふぇくしょん この曲は演出の毛色がちょっと異なります。煉獄丸さんにパーティクル部分の演出を作ってもらって、ライティング調整だけ私の方で請け負いました。曰く「お客さん含めてワイワイ楽しめるように」とのことだったので、会場全体を明るく、パーティクルもハコ全体を巻き込み、楽しげな感じになるようにしました。

すーぱー☆あふぇくしょん

パーティクルも、演者も、映えるように。という意識で組みました。パーティクルは明るく、演者は色が際立つように、という調整。パーティクルが先に準備されているということで他の曲とはベクトルの違う難しさがありましたが、これもまた楽しかったです。

本当は時間がしっかりとれていたらビームライトも含めたかったんですが、あまりにも時間がありませんでした。悲しい……。(時間がなかったのは煉獄丸さんからの演出が出るのが遅かったわけではなく、私のスケジュール調整が下手すぎるだけです。なんなら、本番6日前には演出をいただいていたため……。)

本番ではMCのフリも相まって、会場全体が楽しんでくれたようで何よりです。

パラソルサイダー

パラソルサイダー 演出後回しにしたら間に合わなくなっちゃったシリーズ(再放送)。ダンサーの地力が高いことを信じてダンスで殴ってもらいます(再放送)。

振り付け元動画がそのままリファレンスです。色々な場所がキラキラしるので、キラキラさせました(語彙力)。liltoonのラメ機能を活用して、色々なところを輝かせました。ポスプロ側でBloomをかけるとラメが白っぽくなってしまうので、コントラストを許容限界ギリギリをほんのり踏み越えるくらいまで上げました。ほんのり踏み越えているため、ラメの一部がすごいマゼンタになったり、すごい緑になったりします。

コントラスト上げた効果がもう一つあり、写真の撮って出しでもレタッチしたみたいな感じが出ます。コントラストに限らずポスプロを有効に活用すると撮って出しが良い感じになりますが、VRChatterはレタッチでコントラスト上げがちなので特にそう感じることになります。

背景のモニターみたいな場所も概ねラメです。ただ、それだけだと味気ないので薄めのパーティクルを舞わせてモニター内に変化を出しています。モニターのような平面に直接投影しているわけではなく、モニター部分をStencilで抜いて奥行きを出しています。奥行きがあるので、多少セッティングがガバガバでも大丈夫。大丈夫なので、ラメのQuadとモニターの間にパーティクルが出ています。

サビになると、パラソルとサイダーのパーティクルがステージに舞います。って思っていたけど、出ていたのはパラソルではなくアンブレラでした。まぁ気づかないでしょ。

パラソルサイダー エグい床面反射です。これはもう素直にミラーを置いています。より厳密には、ミラーの上から半透明の床を置くことで、"ある程度反射する"表現をしています。負荷は……知りません。会場全員サイリウムアバターだし、ここ以外の描画処理軽量化を詰めてるし、まぁ~…… 大丈夫でしょう!

全体を通して、明るくて楽しげな舞台を演出できたかな~と思います。キラキラさせるのが普通に楽しかったので、こういうのはまたやりたいですね。特にモニター下の虹色の部分とか、個人的にめっちゃ好きです。

smooth criminal

smooth criminal ちょっとだけ本気、出してもええか?

今回の楽曲群で一番力を入れた演出です。光り方の制御、ポスプロの調整、音と演出の同期性、そして常識の定義と破壊。限られた時間の中でしたが、できそうなことを詰め込みました。

smooth criminal 全体としては、ビームライト主体の素直な演出です。ただし、リズムに合わせてビームライトが明滅すること、明滅に合わせてDirectionalLightを制御している点が特徴的です。DirectionalLightとBloomの合わせ技によって、リズムに合わせてサイリウムが光るようになっていました。これは完全に想定外でしたが、嬉しい誤算です。かなりBloomが強いので、AudioLinkはもうちょっと弱めてもよかったかも。

smooth criminal Bloomといえば、この曲では変なことをしています。十分に明るい部分が全て水色に発光するよう調整を行い、ビームライトの色を際立たせています。ここで1枚目の写真を見てほしいのですが、後ろから照らされている白っぽいビームライトとアバターの境界は青っぽくなっているんですね。こういう効果を出すことができます(語彙力)。

smooth criminal この曲も一部SpotLightを使用しています。センターのこむここだけちゃんと見えるようにして、それ以外が見えなくなるような効果を狙っています。ビームライト自体は光源ではないからこそ、闇も光も制御しようねという気持ちに。

smooth criminal はい大問題地帯、ゼログラビティです。会場にダストパーティクルが舞っていたことにお気づきでしょうか?そして、このダストパーティクルは"反重力方向"に舞っていることにお気づきでしょうか?ゼログラビティ中は、ちょうどライトの向きとパーティクルの舞う向き、そしてダンサーの身体の向きがぴったり重なるようにしました。重なるようにダンサー側に協力をお願いしました。「ゼログラの角度は30°!」って。ダストパーティクルという常識を規定したうえでの、ほのかな破壊でした。

VRChatにダンス発表会系のイベントは数あれど、流石にこの曲は見たことがありませんでした。意外な曲選から繰り出される満足感のある演出。お楽しみいただければ幸いです。もう全然終わった後だけどね!

ブッとんでいけ!

ブッとんでいけ! アンコール/エンディングです。折角作ったものがあるので、再利用しました。リファレンスは私たちの「ブッとんでいけ!」踊ってみた動画です。いいところで場面転換を挟みつつ、良い感じ(TM)にする方針で。

最初はいつものステージです。カラフルな背景はビームライトでやっています。文字はナユタン星人さんがMVで使っていることで知られるコーポレート・ロゴで、先の動画と同じです。ステージ最前列で見ると多分文字の大きさが遠近法で揃っていい感じです。

ブッとんでいけ! 次はパラソルサイダーのステージです。というかポスプロまで流用です。時間なかったので……。背景に楽曲紹介が流れるのはすたぷれ2ndのリスペクトです。というか、あまりにも良すぎたので採用しました。

ブッとんでいけ! 基本的にはリハーサルの写真を流しましたが、この曲だけはリハーサルに演出が間に合わなかったので、写真をその場で用意しました。その場で。 ワールドにカメラが仕込んであり、良い感じのタイミングで画像が生成されるように設定されています。なので厳密には全員ほんのり違う写真が出ているはずです。確認する術はないですが……。この曲以外にこれをしてしまうとLateJoinerに対応できないので、普通にこの曲だけです。どちらかというと演者が驚いています。なぜならリハーサルにいなければ確認する余地もないので……。

ブッとんでいけ! 最後はパメラのステージです。背景が違うとガラッと印象が変わりますね。ド逆光。やりたかったのでやりました。一応Skyboxの光源方向とDirectionalLightの光源方向は丁寧に揃えました。これくらいやっても思ったより逆光感が出きらなかったので、次回は逆光ライト設定とかアバター側に設定してもよさそうですね。今後の研究もお楽しみに。

ダンス部発表会を終えて

集合写真 楽しかったです。

私がガッツリ演出全体の面倒を見るのは、これがはじめてな気がします。あとダンサーとしても久しぶりの舞台でした。やり方次第で表も裏もできるのは、やはりVRChatだからこそやりやすいのかなと思います。

あとみんなモチベーション高くてすげ~!ってなってました。それもあって作ってて楽しかったですね。あまりにも時間はありませんでしたが……。次回文化祭編ではもうちょっと時間取りたいですね。って、え?文化祭は12曲あるの?????みんなモチベ高すぎない?????

後で軽く分析したところ、スクール関係者が約35%、ダンサー/パフォーマーが約25%、あとはイベント好きや演出屋、海外勢の方もいたりして様々な層にお越しいただきました。Lag:N/Aさんにお褒めいただいたり、akidenさんからの感想を小耳に挟んでいたりして、頭ぐるぐるでした(ありがとうございます)。

書き残しが非常に長くなってしまいました(15k文字ほどあるらしいです)。出すまでにも時間がかかってしまいました(1ヶ月くらいかかったらしいです)。今回はここまでということで、次回パワーアップした文化祭編で会いましょう~!